専業設計士の居ない建売メーカーと工務店の実情

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私の考える≪住まい≫についての客観的見方ーPart-1専業設計事務所に委託する場合と建売メーカー・工務店などの設計施工会社に発注する場合との違いについて述べてみたい。
先ず《専業設計事務所に委託する場合》のメリット・デメリットから説明します。
一般的な専業設計事務所が、一体どの様な業務をどの様な形で進め、且つ生業としているのか、等を説明をします。先ず、業務内容として①様々な基礎調査(・環境調査・周辺のインフラ調査・地盤調査・液状化有無調査・建築基準法と様々な関連する法的調査・顧客からの要望等の聞き取り調査、その他)、②基本計画、③基本設計と概算工事費、④実施設計、⑤施工会社からの提出見積書の精査業務。尚、建築積算内訳明細書作成業務は追加業務とする。⑥監理業務(設計図通り施工されているかの確認業務と品質管理業務、⑦その他(※建築内外装におけるカラースキーム)等。以上が主な業務であり、設計図や仕様書等を通し、受注された施工会社に対し設計監理業務の中で、客先と共に現場打ち合わせや確認、工事に於ける様々な検討課題の整理と納まりのチェックや確認等を行っていきます。基本計画では、客先からの様々な要望や考え方等を聞き取り、或いは打合せ等を通し、ラフにフリーハンドスケッチによる複数の計画案を客先とのキャッチボールの中で行い、徐々に最終計画案に向かって絞っていきます。ここで私自身のスケッチ案の描き方を少し紹介します。私はスケッチをフリーハンドで且つ4B以上の柔らかい鉛筆を使い行います。何故、鉛筆なのか?と問われれば、パソコンにて具体的な寸法を入れスケッチするより、手書きで且つ感覚的に鉛筆でスケッチした方が、私自身、第2の脳の活性化が図れるからであります。この事は16世紀初め、既にレオナルド・ダ・ヴェンチが『私は手と目により思考する』『ドローイング(手で描く事)は思考の為の最も優れた道具である』と言っており、私もあやかってフリーハンドにてスケッチを行い、概略的にプランや立面や断面等を樹横断的に考えながら詰めていくのです。計画概要が決まれば、次に、基本設計と称し、パソコンでフリーハンドスケッチを必要なスケールでCAD化し、夫々、具体的に作図をして行きます。併せて、私と客先への検討用として3次元CADにて建物配置や形、等をモデリングしそれに色彩計画案に基づくCGを立ち上げて客先との合意形成が出来るまで繰り返します。その後、客先からの最終承認を経て漸く実施設計へと進むのです。
実施設計について、設計に係る作業量を図面枚数に換算すれば住宅の場合でも平均で45枚前後になります。よって、設計施工会社が言う様な『設計料はサービス』等と言うキャッチコピーは作業量からしても言えないと思います。それから設計監理業務については基本的に「客先と設計者の両目線で行う監理」であり「第三者的立場での監理」となり、設計施工会社の現場管理とは違う対局の立場で行う事になります。又、工事中の現場変更等に関し、客先からの設計内容に関する様々な変更等が「追加や変更」と言う形で発生する事があります。しかし、その変更や追加等の必要性を精査し、追加工事費が過大にならない様に設計施工会社との折衝や交渉を客先の代行として行う事も大きなメリットかと考えます。

《設計施工会社に発注する場合》のメリット・デメリットとして。
一般的に大手建売メーカーの広告や宣伝には多額なお金を掛けている場合が多く、有名タレント等を介し印象的な誘い文言で家を建てたい人に夢や希望等を語りかけてくるが、この様な宣伝費は当然、請負金額の中に含まれますし、設計料に関しても、サービスと称しつつ諸経費の中に含める会社もあれば、設計料として請負見積金額の中に含める会社も様々ある様です。

因みに専業設計事務所の設計と設計施工会社の設計とは様々な面で違う事が分かります。設計施工会社の設計とは、施工する為の施工や製作図に近いのかもしれません、その為に住まいに対する客先からの考え方や要望等を取り纏めて最終的に仕上表、平面、立面、断面等の図面を纏め、矩計図や詳細図等の図面は自社標準図や類似物件データを利用していると思います。その上で、客先へのプレゼンテーションとして3Dによる外観や内観イメージにウェイトを置いている様に思います。又、見積を行う為の設計図でもある訳です。それ故、設計期間に関しては比較的短期間で済む事になります。

 さて、ここで、前述と重複しますが、専業設計事務所の場合の『設計業務に関する業務量として一体どの位、掛かっているのか』について、簡単に説明します。
 先ず、最初は客先からの様々な住まいに関する考えや要望などをラフなスケッチ程度で『基本計画』を纏めます。次に『基本設計』に進むのですが、ここででは、正確な縮尺図面にて建物配置図、平面図、立面図、断面図等の基本的な図面を作成、且つ客先に対するプレゼンテーション用として、或いは打合せ用として3DCGによる、あくまで検討用として客先に説明を行い客先から承諾が得られるまで、その作業が続けられ、承諾を得て漸く実施設計に入ります。
因みに実施設計図とは、具体的な寸法や仕上げ、仕様等を必要に応じて詳しく書き込んだ図面の事を指します。よって、住宅設計の場合、実施設計図として「建築意匠図」20枚~30枚程度、「建築構造図」6枚〜10枚程度、「電気設備図」5枚〜10枚程度、「機械設備図」8枚〜10枚程度、「修景・外構図」3枚〜5枚程度と、少なくとも40枚~50枚前後の図面枚数が必要となります。又、実施設計図面は、設計施工会社や建売住宅メーカー、ゼネコン等が、その工事を請負う為の『積算』や『施工』等に必要な情報等を実施設計図から拾い出しし見積り金額を算出する、その為の重要な図面となります。

さて、平成に入り1989年頃から家を建てる年齢層が低年齢化し、20代後半からでも家を建てる事が可能となってきました。理由として20代の若者でも金融機関等から最長35年の長期住宅ローンが組める様になってきた事と日銀のマイナス金利政策等で家を建てる借入条件が非常に容易になってきた事が要因かと思います。
 他方、昭和40年(1965年)代頃では、住宅を建てる年齢層は、定年退職前後の50歳代~60歳代位の中高年層が退職金やそれを頭金に銀行や住宅金融公庫等から借りて建てると言う事が一般的でありました。
 よって、若い年代層と定年前の中高年層の「住まい」や「住まい方」等に関する大きな意識の違いが生じてきた様に思います。併せて、前述の他に、もう一つ、建設資金が親子2世代に渡り返済可能とするリレー方式も新たな家の建て方の一つとして出てきました。

 さて、新たに家を建てたいとする各年代層の傾向として、私感ですが、若い年代層は外観や内装デザイン、色彩などに拘り、外観的には片流れ屋根や片流れ屋根とフラットルーフの組み合わせ、或いはシンプルなフラット屋根等を好み、且つ色彩的にもモノトーンを基調に洋風スタイルがベースにある様です。又、内装等もモノトーンで構成する事が多い。理由として、壁・天井などをモノトーン基調にする事により様々な色・形の什器・備品などの配置が、インテリアとして違和感なくマッチング出来る、と言う事を意識しているのではないでしCGによるインテリア的な影響があるものと思っております。だから、本来、余り必要としない照明器具や間接照明等により是見よがしな演出効果に惑わされ、最も重要な《住まい》に於ける“本質”を見失ってしまう事を危惧するのです。
 他方、中年層の傾向として、外観的に木材に拘りコストの高い純和風的志向と石やレンガ、或いは磁器質タイル等の本物を使った洋風タイプの2極化があるようです。そして最後に、親子2世代の傾向として子世代の考え方や意見の違いと親世代の考え方や意見の違いが見られ、妥協点への折り合いの付け具合が大きく具現化されている様です。例えば、キッチンとダイニングに対する考え方も、子世代層の多くはオープンキッチンのアイランド型キッチンにより食事に欧米化が見られるが、これに対し、親世代は、日本の伝統的なご飯を中心とした食事スタイルと、背景にある戦中戦後の食糧難や、様々な国の食文化を取り入れ、戦後の食文化を進化させてきた歴史が、欧米型食事スタイルも取り込みつつ、まだまだ“ご飯”を中心とした日本の伝統的食事スタイルから抜けきらず、例えば、朝食の食べ残しは昼食時に再加熱し、最調理して戴く、等の戦後の伝統的な食事スタイルからクールで合理的なオープンキッチンに馴染むのは、多少時間がかかるものと思います。しかし、私は、建具で仕切った1坪程度の調理専用の部屋をダイニングルームから死角になる場所に、しかもキッチンに隣接させておけば、残った料理やみそ汁、或いは料理の入った鍋や食器等をこの調理専用室に置いておけば、キッチン周りは常にクールになっており、例え急な来客があっても、十分に対応できるものと考えるのである。又、居間やホール等の「吹き抜け空間」への拘りに関し若い子代層からは採用されているものの、親世代は気積が大きくなる事による暖冷房維持費の掛かり増しが気になり、吹き抜けへの拘りは子世代より低いのだが、子世代と親世代の2世帯住居の場合、親世代の考えを子世代が押し切り、「吹き抜け空間」を採用するケースもあるようです。
又、若い年代層から要望が比較的少ない「書斎」や「2間続き和室」等は、逆に中高年層からの要望が多く、親世代と子世代の親子2世代に関しては、子世代の考えや意向が親世代のそれよりも大きく、最終的に親世代が妥協してしまう事が多いと思います。
 総じて、若い年代層と定年前後の中高年層とでは「住まい」に対する『住まい方や目的、或は思いや期待感』等に関し、夫々、社会的、或いは年齢的な価値観の違いから、ゼネレーションギャップの様なものを感じてしまいます。

以上



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