私の考える≪住まい≫についての客観的見方ーPart-1

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―専業の設計事務所と建売メーカーや工務店などの設計施工会社との違いについてー
 私自身、《住宅》と言う言葉と言うか、その響き自体が余り好きでない。そんな事も有り住宅について「住む」「住まう」のそれぞれについて考えてみた。
 先ず「住む」とは「そこで暮らす」と言う事であり、朝食を食べたりガーデニングを楽しんだり夜になったらお酒を嗜んだり、住民としての当たり前な生活を行う事です。「住む」の「住」と言う漢字には「その場所にとどまる」と言う意味があります。「とどまる」と言う事は基本的にその場所から動かない外に出ないと言う事であり、「住む」と言う事は、長時間その場所で住まい、過ごすという意味になります。会社や職場などは、あくまで仕事を行う場所であり、学校等も同様、勉強を行う場所であり「住む」とは言いません。
 他方、「住まう」と言う事は、冒頭の「住む」と同様に「そこで暮らす」と言う意味に違い無いのですが、しかし、ニュアンス的に「幸せに暮らし続ける」或いは「丁寧に暮らしを送る」と言う意味に捉えられると思います。つまり《住宅》の「住む」は、生活の伴わない「住む為の単なる〈箱〉や〈容器〉」でしかなく、その〈箱〉若しくは〈容器〉に社会との関りや人との営み、つまり 社会の中で人が人らしく生きる為の生活が伴ってきて初めて「住まう」と言う言葉になるのではないかと考えています。
尚、「住まう」と言う言葉は「瀟洒なマンションに住まう」とか「都会の一等地の中で素敵なレジデンスに住まう」など不動産広告のキャッチコピー等にも使われる言葉かもしれません。

 さて、私自身、この「住む」「住まう」をイメージしながら、これから新しい家を建てて住む(暮らす)場合、本当に『良い家』とはどの様な家を言うのか等について考えてみたいと思います。

 先ず、住宅を建てるには敷地が必要となります。しかし、その前に設計依頼する為の設計料や建設工事費用、椅子・テーブル等の備品購入費用、竣工後の必要税金等の諸経費等、様々な費用がかります。そして、その予算組はどうするのか、等の『資金計画』が必要となります。
又、家を建てる場合の最も重要となる基本計画や基本設計を専業の設計事務所に依頼するのか、或いは建売メーカーや工務店などの設計・施工会社に直接、設計も含め頼むのか、何れかを決めなくてはなりません。

先ず、 専業の設計事務所に依頼する場合は、設計・施工会社の資本力・受注額・有資格者の人数・技術力などに関するランク付けが県や各自治体により格付けされており、同様に、専業設計事務所にも資本力・受注額・有資格者の人数・技術力など、設計に関する能力評価として県や各自治体から格付けされており、特に基本計画力・実施設計力・意匠デザイン力・最新技術とその応用力・省エネ技術の実績や取組み・工事の監理能力等が、総合評価されております。よって、専業設計事務所の中に於いても相当なレベル差があるのです。中には設計図面を描ける事がイコール設計である、と勘違いしている事務所もある様です。単に設計図面が描ける、と言う事と設計ができると言う事は、全く別物、かなり大きな違いがあると言う事を客先は知るべしです。例えば、個人の設計事務所より組織で運営されている設計事務所の方が、平均的に総合力のレベルは高いと思います。何故なら、公共建築の発注方式は、従前からの入札制からプロポーザル方式やコンペティション方式に代わってきており、各専業設計事務所ではその為に日々の努力や研修や勉強、或いは様々な情報収集等が必須条件であり、個人設計事務所には無い緊張感の中で凌ぎ合っております。尚、個人設計事務所の1級建築士は最上位の資格として位置付けられている様ですが、少なくとも私が在籍した設計事務所の場合は、業務を担当する為の最低限の資格と位置付けており、所員同士も切磋琢磨しつつ強いライバル意識を持っている様です。

 さて、設計事務所の選定に関し、住宅を得意とする事務所、公共施設を得意とする事務所、商業施設を得意とする事務所等々、様々あり、力量にも大きな差があります。よって、前述の通り、設計事務所の事も良く調べて、良く吟味の上、設計事務所、或は設計者を選ぶ事を薦めます。

次に建売メーカーや工務店などの設計施工会社に発注する場合の大きなメリットは、何と言っても 実物大のモデルハウスを持っていると言う事であり、客先は、このモデルハウスにて住み心地や物理的な感触等を体験し検証できると言う大きなメリットがあります。しかし、それよりもっと重要且つ大切な事があるのです。
 
それは、着工してから竣工するまでの工程(プロセス)期間に、直接、客先が見たり立ち会ったりする機会が、客先が強く希望しない限り、ないと言う事であり、私はそこがある意味、大きなデメリットであると言いたいのです。勿論、設計・施工会社としての※程度や質によるが、設計と施工の境界を曖昧にされてしまう事が、大きく懸念される事であります。境界が曖昧になれば、基本の設計や仕様が、施工会社の都合から安易に仕様や設計が変更され、見積内容と違う設計や仕様に金額も含め改ざんされてしまうリスクが生じます。設計施工会社に発注する場合のリスクとして是非、気を付けたいものです。
 もう一つ、リスクとして大きくあるのは設計事務所の介入が全く無いと言う事は、第三者的な立場での工事監理が出来ないと言う事であり、客先にとっては大きな不安材料となるのかもしれません。但し、設計施工会社の中には勿論、立派な会社も多々あります。※程度や質とは施工会社の技量や会社としての良識を指します。

ここで参考に施工者と客先が結ぶ《施工管理》と専業設計事務所と客先が結ぶ《工事監理、若しくは設計監理》の違いについて簡単に説明します。
 工事着工後の《施工管理》とは、設計・施工会社側の現場代理人、又は現場監督員が工事現場内を直接監督し工事全体の工程管理や品質管理、原価管理、現場内の安全管理、等を管理するものであります。他方、専業設計事務所が客先と結ぶ《工事監理若しくは設計監理》とは、設計事務所の設計監理担当者が工事現場の各工程の状況を設計図書と照合し設計図通りに施工されているか否か、の確認や施工上、重要な工程に達した時の施工状況の確認、工程の中の特に施工上難しい個所等の重点的確認により不具合箇所や欠陥箇所とならぬ様に事前に予防したりする事であります。
 私は設計通りの品質を保持しつつ良い建築をつくる為には第三者性の高い設計監理(工事監理)が必要不可欠と考えております。よって、叶う事ならば専業設計事務所に依頼した方が望ましいが、何れにせよ、以上の様なメリット・デメリットを良く勘案熟慮した上で、専業設計事務所に依頼するか設計施工会社に発注するかを決めるべきかと思います。
施工会社によっては《施工に関する社内マニュアル》等により1級、若しくは2級建築士の有資格者を技術職員として配置し、自社施工を厳しく管理監督している会社もあります。当然ながら現場技術職員の立場を会社の経営や運営方針と別に中立的な立場で社内第3者管理システムの構築と実績が必要であるのでそれなりに企業トップの覚悟と理解が必要であり容易な事ではありません。
                                    続きはPart-2に。






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